歌舞伎は日本を代表する文化、でも観たことがある人はわずか5%程度

 歌舞伎の関するお話の際によく使われるエピソードなのですが、フランス人が日本人に「あなたは歌舞伎を観たことがあるか?」と尋ねると、たいていの人が「ない」と答えるそうです。それを聞いて、フランス人は「どうして日本人なのに、歌舞伎を観ないの?」といぶかしがるそうです。自国の文化を大切にするフランス人らしいお話です。


 さて、その歌舞伎は間違いなく日本固有の文化(演劇)であり、日本を代表する伝統芸能の一つです。歌舞伎は国指定の重要無形文化財であり、ユネスコの世界無形遺産にも登録されています。ところがその歌舞伎を観たことがある人は、少し古い調査ですが、2003(平成15)年の「内閣府大臣官房政府広報室」の調査によると、わずか5.3%たらずとても寂しい数字となっています。私たちは歌舞伎はとても面白く楽しめる舞台であり、生の舞台を観ると感動すること間違いないと思い、歌舞伎の観劇をオススメします。

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歌舞伎は京の河原の出雲の阿国の「かぶき踊り」から始まった

 歌舞伎という名称の由来は、「傾く」(かたむく)の古語にあたる「傾く」(かぶく)の連用形を名詞化した「かぶき」だといわれています。


『当代記(とうだいき)』という史料の1603年[慶長8年]の項に『この頃、かぶき踊りというものが踊られた。「出雲の巫女(みこ)を名乗る国という女性(一般的に『出雲の阿国[お国]』と呼ばれている)が、京に上り変わった風体の男の扮装をして踊った」という意味の記述が残っているようです。 歌舞伎の歴史は、この出雲の阿国の「かぶき踊り」から始まったとされています。京都・南座の建物には「歌舞伎発祥之地」のレリーフが埋め込まれていて、南座横の鴨川の土手には「お国の像」が建立されています。

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歌舞伎を楽しむためには、好きな役者(俳優)をつくること

 さて歌舞伎は「なんたってアイドル(役者・俳優)」ではありませんが、役者中心の演劇です。今、市川海老蔵さんや中村勘三郎さん、坂東玉三郎さんや片岡仁左衛門さん等々、とてもたくさんの人気役者(俳優)たちが活躍しています。そうした人気俳優舞台(或いは個性派俳優)を舞台をたっぷりと堪能したいものです。


歌舞伎に演出家はいなくて、その舞台の主演俳優が座頭となり、演出もするのです。そして、踊りながら琴を奏でたり、筆で唄を曲書きしたりと、長年の修練による役者の技をたっぷりと楽しむことができるのが歌舞伎です。歌舞伎を楽しむためには、好きな役者(俳優)をつくることが近道です。

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鍛え抜かれた芸、豪華な舞台装置や仕掛け、色鮮やかな舞台衣装

 歌舞伎は世襲の世界で、先頃市川亀治郎が澤瀉屋・市川猿之助を襲名し話題になっていますが、成田屋(市川團十郎家)、高麗屋(松本幸四郎家)、松嶋屋(片岡仁左衛門家)等々があります。そして、それぞれの俳優の家に代々伝わったり、あるいは俳優個人が得意としたりした演技・演目・役を「家の芸」とよびます。代表としては、幕末に7代目市川團十郎[当時、5代目市川海老蔵]が、代々の團十郎が得意とした「荒事(あらごと)」の役をまとめた「歌舞伎十八番」が挙げられます。


 そして同時に、こうした俳優の鍛え抜かれた芸の魅力に加えて、歌舞伎の魅力は豪華でな舞台装置や仕掛け、そしてまた絢爛たる色鮮やかな舞台衣装、そして早変わりや宙乗りとまさに趣向を凝らして、これでもかと観客を舞台に引き込んでいく演出が展開されます。


 ところで、歌舞伎には女性が登場しません。男性だけで上演される舞台ですが、これは1629年に江戸幕府が女性の舞台出演を禁止したことに端を発しています。以後、歌舞伎では男女の役を「男方」「女方」と呼ぶようになり、後に「男方」は「立役」、「女方」は「女形」と言われるようになっています。


 東京・歌舞伎座(現在改装中)や新橋演舞場、そして大阪・松竹座ではイヤホーンガイドもありますから、初心者の方でも歌舞伎はしっかり楽しめます。是非とも、歌舞伎の世界に足を踏み込んでみてください。

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江戸時代の「西国三大芝居どころ」は、宮島、金比羅と並んで備中・宮内(岡山)

 ところで、井原西鶴の『浮世草子』には、「西国三大芝居どころ」として、宮島、金比羅と並んで、備中・宮内(岡山)が挙げられています。つまり岡山の地は、江戸時代には宮内地区に歌舞伎の芝居小屋があって、賑わっていたようです。そして、その「宮内地区」とは、現在の吉備津神社前あたりで、芝居小屋は吉備津神社境内にある弓道場あたりに建立されていたようです。


 現在、毎年開催されて大人気の「こんぴら歌舞伎」はもちろんのこと、宮島歌舞伎も開催されていますが、この岡山の地の宮内歌舞伎だけは開催されていません。岡山の人間にとっては寂しい限りです。いつの日か「復興 宮内芝居」として、歌舞伎公演が開催されることを期待しています。  なお「宮内芝居」については、赤木愼平著『おかやまの歌舞伎 備中宮内芝居を中心に』(おかやま・歌舞伎・観る会発行、吉備人出版刊)をご一読いただけると嬉しいです。

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